花と音楽

先日の祝日の午後、 西葛西のプライベート空間へお花をお届けしました。この演奏会には、イタリア在住のソプラノ歌手とピアニストの方がご出演。お二人の生徒様やご家族、ファンの方でほぼ満席。

ここ数年、自粛や変化を余儀無くされ、何となく心が満たされない生活が続く中、音楽を聴くと一瞬で日々のことを忘れ、満たされ豊かな気持ちになりました。

花を愛でながら音楽を聴く。これは、お一人でもご家族やご友人とでも相乗効果でリラックスして楽しむ事ができそうですね。

普段聴かない曲に挑戦するのも楽しそうです。クラシックを普段聴いていない私でも、曲の内容を知ると、とても身近なものに感じる事ができます。例えば、モーツァルトの歌曲「すみれ」です。こちらはゲーテの詩を用いた短い曲です。

内容は、一本のすみれの目線で描かれています。

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ひっそりと牧草地に咲いているすみれは羊飼いの少女に恋をしてしまいます。

もしも自分がこの世で一番美しい花だったら少女に摘み取ってもらえるのに…と

しかしすみれは少女に気付いて貰えず踏み潰されてしまいます。

それでもすみれは、大好きな少女に踏まれて本望だと。哀れで可愛いすみれ。

すみれを擬人化した可愛らしい曲です。

恋して高揚したり切なくなったりする気持ちを、曲調やリズムで分かりやすく表現していると分かりました。

お花のアレンジでも同じような事があります。

色や形、質感、挿し方(リズムとバランス)で表現する。音楽や絵画と共通するところがあるように思います。

すみれは、冬から春のレッスンで頻繁に登場する花材です。元々好きな花の一つですが、この曲を知って、すみれが益々可愛く身近なものになりました。これから毎年アレンジする際には、この曲を思い出すことになりそうです。笑

 

まだまだ油断はできませんが、控える暮らしから、少しづつ拡げる暮らしへシフトしたいと思う気持ちを大切に

先ずは地域で今まで気付かなかった楽しみを見つけることから始めようと思います。

小さな楽しい発見が、きっと生活や心を癒し豊かにしてくれると思います。

そして私も、心豊かな暮らしにお花を通じて一役買えたら幸いです。

小さな国土に世界最大の花市場

寒い日が続き春が待ち遠しい毎日ですね。この「厳しい寒さ」これがないと咲かない花、それはチューリップです。そこで今月のレッスンでは、寒さに強いチューリップのアレンジを皆さんと楽しみました。

「チューリップ」と言うと何を思い出しますか?「オランダ?」「アンデルセンのおやゆび姫?」「ハウステンボス?」それぞれにありますよね。レッスンに参加された方に伺ったところ、予想通り「オランダ」という方が殆どでした。チューリップはオランダの国花ですし、風車とチューリップの写真がパッと浮かびまよね(笑)

実はチューリップの原産国はトルコってご存知ですか?この仕事をするまでは、私も原産国はオランダだと思ってました(笑)

そもそもチューリップと言う名前は「tulipan(チュリパン)=ターバン」トルコ語が由来という説が有力で、16世紀にトルコからオランダへ渡ったそうです。

この可愛らしい花は、オランダで瞬く間に人気となり、特に白い筋が入った稀少な珍しいチューリップは多くの人を魅了し珍重され、先物取引まで行われるようになりました。これがエスカレートして「チューリップバブル」(史上初のバブル)が起こります。

代表的なものでは「レンブラント咲き」(実はレンブラントは一枚もチューリップの絵は描いていないそうですが)と呼ばれた、赤と白の絞り模様のもので、この稀少なチューリップの模様は、ウィルス感染によるものでしたが、その美しさに、家が建つ?それ以上の高値で取引されたそうです。

チューリップに高値がつく…冷静に考えると、どうかしてる…と思いますが、それがバブルですよね(笑)

その頃日本は、徳川の江戸幕府開幕、鎖国で長崎の出島でのみオランダ貿易が許された時代。なぜかオランダからチューリップは持ち込まれず、日本に持ち込んだのは意外にもフランス、それも明治時代でした。日本の気候に適さない事もあり、生産できるようになるのも時間がかかり温室栽培が可能になった大正からです。なので、その頃、チューリップは、高価な珍しい花、オシャレな花として人気だったことが想像できます。

トルコが原産国のチューリップがオランダで生産が発達した理由の一つは、寒冷地でもよく育つ球根植物であり、オランダの冬は長く、冬以外は比較的安定した温暖な気候が適していたようです。その他、アマリリス、クロッカス、ヒヤシンスなどの球根がシンゲル運河沿いにある「シンゲル花市場」で今でも沢山売られています。球根以外にも、切花やお土産のお店なども多く見られ、世界で唯一の運河に浮かぶこの花市場は、約150年前に船で運ばれた花を運河沿いで売ったのが始まりでした。

シンゲル市場の近くには、世界遺産に指定されているヘーレン運河があります。海抜0メートル以下の土地が多く広がるオランダは街中に運河があり、土地が狭い分、運河を利用したボートハウスなども多く見られます。これは簡易的なものではなく暮らすための住宅として、ちゃんとした住所もあるオシャレな家。若い世代にも人気です。

この海運大国は、防波堤を作り、その少ない土地を埋め立て、風車の動力を使い土地を作ってきました。これは「世界は神がつくり、オランダはオランダ人が作った」と言われる由縁です。決して農業に向く肥沃な土地でもなく国土面積も少ないのに農作物輸出量はアメリカに次ぐ第2位の農業大国でもあります。この九州程の小さな土地に世界中の花の6割が集まる世界で一番大きな花市場「アールスメール」があり、その規模や花の量は圧巻です。

チューリップのイメージ、なんとなく変わりますね。

かなり話が逸れましたが、フラワーアレンジの話に戻ります(笑)

レッスンの時に、「大まかな完成図をイメージして下さい。」とお話ししますが、中には「イメージできない。」という方も勿論いらっしゃいます。イメージの仕方は人それぞれです。

  • 庭に咲いている花の様子
  • 花を見て浮かんできた音楽
  • 花の色から連想するもの
  • 旅先で見た花や庭園
  • 絵画や映画

などなど…漠然としたものでOK!具体的にイメージするにはインプットが必要です。それには素敵なお花屋さんのウィンドウやSNS、書籍など身近なもので構いません少し意識してプロ達の色使いや形、花合わせを真似してみることから始めましょう。

具体的な完成図そのものをイメージできなくても大丈夫です。自宅に飾る花ですから、自分がいいなぁ、心地よい、見ていると愛おしいなど、気持ちが上がれば良いんです。置く場所や持ち運びなど条件を考慮する必要はありますが正解不正解はありませんので大丈夫です。

楽しんで挿したアレンジは挿す人の気持ちが反映されるので、きっと何か人の心に響くものがあり、綺麗だな、素敵!と感じるフラワーアレンジになるんだと思います。お花の造形デザイン的な話とは一見違う感じの話に思えますがとても大切な事だと思っています。

プロを目指す教室ではありませんが、暮らしの中にお花を取り入れることで、明るくいつもの日常がワクワク楽しいものになります。幸せな気持ちになれるアレンジをご紹介し、これからも喜んで頂けるようなお花とリラックスして頂ける時間をご用意してお待ちしています。

平和の祈り「平山ブルー」

1月16日というと、お正月飾りは、地域によって色々だとは思いますが、関東では7日、関西では15日(小正月)までとされていて、既にお正月気分はすっかり抜け、いつものペースに戻った頃でしょうか。

2023年、お仕事初めは4日のところが多かったようで、とっくにいつもの生活を送っていらっしゃる方が多いかと思います。お稽古が仕事の私としては、スタートは遅めの今週から。

 

今年の最初のレッスンテーマは「絵画アレンジ」

昨年から始めた、絵画を勝手な解釈でお花で表現するという内容です(笑)

今回は、平和を願い描いた作品を多数残された、日本画家の平山郁夫氏作

「平和のキャラバン 東・西」のオマージュ

中学生の頃広島で被爆され、その後、遺症に苦しみながらも絵を描き続け、文化遺産の保護活動に尽力し、文化勲章を受章された平山氏が、あるテレビ番組で取り上げられた際、「お互いの文化を尊重し合えたら戦争など起こり得ない」とおっしゃっていたそうです。

これは人と人、家族や友人などにも言える事ですよね。身近な人になればなる程、忘れがち。今年は発言する前にこれを思い出そう(忘れた時はすみません)と思います(笑)

本題に戻ります!この「平山ブルー」は一度見ると忘れない鮮やかで澄んだ神秘的なブルー「群青色」のこと。

この絵を実際に観たことはないのですが、この一度見たら忘れない神秘的な平山ブルーの顔料は「ラピスラズリ」を使用しているそうで、この青、なんとなく観たことある…って方沢山いらっしゃるはず。

そうです!フェルメールの「真珠の耳飾の少女」のターバンのブルーでお馴染みですね。フェルメールブルー。

実はこの絵の実物を観たことがあって、オランダへお花の研修へ行った際、マウリッツハイス美術館で見ることができました。350年以上も前に描かれた絵ですが、想像以上に綺麗なブルーが残っていて、もっとビックリしたのが、意外と小ぶりなサイズだったことと、ガラスケースに入っていない手が届くところに展示してあって、リアルな質感を観ることができます。(残念ながら、昨年、絵がいたずらされるという心無い行為があったそうです。幸い絵は無事だったそうですが)

またまた横道に(笑)

平山郁夫氏の「平和のキャラバン東」にはシルクロードと太陽(夕陽)、「平和のキャラバン西」にはシルクロードと月が描かれています。これをカラーチャート(色相環)に当てはめると、群青⇆橙の反対色であることに着目し今回は色彩をメインにデザインして頂きました。

色で表現していただく為に、デザインはあくまでシンプル!(珍しく縛りがあります)

●アウトラインはほぼ長方形

●茎は平行か交差のどちらか

●色はグラデーションなのか全体に配置するのか

同じ花材でいつもより縛りがある条件の中アレンジして頂きましたが、三人三様、やっぱり面白い。

私は絵はよくわからないけど父が好きで、子供の頃よく美術館に連れて行かれたのを思い出しました。

その時は、今のように解説もなく全く知識もないまま、ただ観ていましたが、何かは感じていたはず(笑)

絵は国境を越え知識がなくても楽しめると思っています。(すみません美大出てないもので専門性に欠けますが)

同じ絵でも観るシチュエーションやその時の心情で変わりますよね。想像を巡らせるのが楽しいんです。

お花で表現しながら、皆さんは何を考えていたのかな♡

 

 

愛でる、食す、香る 一石三鳥の「菊」

明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

毎年お稽古はゆっくりスタートの私ですが、今年一年のお花計画をあれやこれや考えているところです。

お正月にレッスンでご用意した花材の「菊」は、我が家でもまだまだ楽しんでいます。お正月の花選びは花持ちは絶対!菊は秋が見頃ですが、中国では菊花茶を飲んで健康に役立てたり、長寿の花とも言われ、縁起の良いお花としてもお正月に相応しいと言えますね。

子供の頃、祖父母の家にお年始のご挨拶という名の、お年玉おねだり訪問の際、宴会のお料理が並べられる前の、人気のない和室をこっそりと覗くのが好きでした笑。子供ながらに、襖を開けた時の凛とした張り詰めた香りと、着物箪笥の白檀の落ち着いた香りは、一瞬で大人の気分にしてくれたのを思い出します。

少しツンとした香りは、今思うと、和室の床の間に生けてあった菊の香りだったんだと思います。菊にはカンファーという少し刺激のある頭をスッキリさせる香り成分が入っています。それと着物箪笥の引出しに入れられていたに香り袋、これは白檀(サンダルウッド)ですね。白檀は心を落ち着かせる効果があるそうで、そこに畳の香りも混ざって、一瞬で大人の気分になった訳です。

香りって一瞬で気分を変えられるから不思議。今月は、菊の精油はそもそもないのですが(ないのかな?)、凛として落ち着いた香りをブレンドしてみようかと思います。レッスンの際に楽しんで頂けるといいな。

お花の話に戻りますが、今回、特に拘ったのは、白いスプレータイプの糸菊「古都の夢」。この控えめなのに華がある、清楚なのに存在感大の白い花に一目惚れで最初に仕入れました笑松と白い糸菊とナナカマドの赤だけでも十分華やかなアレンジになったかと思います。

これは農家を営んでいた母方の祖母の話、ご本人は農作物の生産者でしたが、菊が大好きで、毎年「菊まつり」(札幌で開催)に一緒に連れて行ってもらっていて、5歳くらいだったのかな…私にとっては自分の身長よりも背の高い菊。葉と茎とガクを愛でる5歳。残念ながらその記憶しかないです笑あとは、やはり普段から着物をよく着ていた祖母と菊の香りが今でも記憶にあります。香りってすごいですね!

また話が香りの方へ逸れてしまいましたが、糸菊が美しいという話でしたね。あの細い花びらと、その先端のカール具合がなんとも美しく、花びらの先端が重たそうにしなっている感じもよくて。華奢な姿でいながら凛としていて。香りは残念ながら弱いんです。

中国が原産の菊ですが万葉集では詠まれていないとか、違う名だったとかいう話は有名ですが、日本でも菊の品種改良が盛んに行われたのは江戸時代だそうで、糸菊がいつ頃からあったのかわからないけど確か、金屏風に描かれている白い菊の中には糸菊は見当たらなかったと思います…

その頃ヨーロッパにも中国から入ってきた菊を、ルノアールやモネも沢山描いているんですよね。その様子から、その頃流行った、オシャレでイケてる花だったことが分かります。絵画に詳しいわけではない私でも、ルノアールの「菊の花束」はどこかしらで見たことあります。

ヨーロッパでは菊の花の捉え方が日本とは大きく異なるそうで、普段使いでマムのブーケを飾ったり贈ったりはありなんです。喪の時も日本のような三方見のものではなく、丸いラウンドにアレンジされていたものを市場で見かけました。品種改良されたマムは、華やかさ、可愛さ、他の華やかな花に劣らず素敵です。

これからは、マムをもっと素敵にアレンジに取り入れていきたいと思います。花持ちも最高に良いし、これはもう好きになりますね♡

 

 

 

花屋さんで迷ったら

よくご質問頂くのが、お花の色合わせについてです。お花屋さんで何を買ったら良いのかわからなくなってしまう。そんな風になった事がありませんか?

沢山の綺麗な花を目の前にすると目移りして、描いていたイメージがブレてしまう。私もです(笑)花は一輪だけでも素敵ですから、それを組み合わせようとすると、少し色の知識なども必要になります。ですが難しく考える事はありません。

1.お花屋さんの前で最初に目を引いた「ときめくもの」をメインとします。

その色はきっと、今、自分が必要としている色かもしれません。

  • 心にはたらく色彩効果
    • やる気や行動を起こしたい→赤
    • 明るく楽しい気分になりたい→オレンジ
    • 静かに癒されたい→緑

ごく一般的な例ですが、いざ、お花屋さんの前に立つと忘れてしまうんです。

2.次にメインを決めたら、その花が引き立つ他の花を2〜3種類選びます。

  • メインカラーとの対比
    • 同系色
    • 反対色(補色)
    • 白(まとめ役)

3.最後にグリーンを1種選びます。

こちらは、全体をまとめる役目なので、広がりを持たせたい場合は枝物、シャープに見せたい場合は先の尖った葉物、流れや動きを強調したい場合は蔓ものなどなど…

ご参考までに。お花屋さんで自分で花を選ぶ第一歩として、是非お試し下さいね。

花束レッスンでは、花合わせのお話など少しさせて頂いています。気軽にご相談下さい。

藁の花留め

藁の花留めの参考例(季節の花クラス/クリスマスレッスンより)

今週末の季節の花クラスは、少し遅いスタートのクリスマスアレンジ。

テーマは「森の中のクリスマス」イメージするものは人それぞれ。昔読んだ絵本、小説に出てくる場面、旅先の景色などなど、それぞれ違いますよね。そのイメージをアレンジメントで表現します。メイン花材は様々なエバーグリーン(ほぼそのままドライになります)を使用します。

  • ヒムロスギ
  • ブルーアイス
  • ネズエダ…etc

テクニック面では花留めをご紹介します。今回はドライになる枝や葉物、またはドライフラワーを一部使用していますので、花留めを藁(ワラ)で作るご提案です。

これは、先月の酉の市で熊手商の方が、手際よく社名を入れた立て札や飾りを、まるでフラワーアレンジのように飾り付け仕上げていく姿を見かけました。いったいどこに挿しているのかよく見ると、藁を束ねたものに挿していて…「これにしよう!!」と。

後日談になりますが…藁で花を留めのは、「こみわら」と言って、生け花では剣山のない時代から使われてたそうで、まさに原点回帰とはこの事ですね笑。原点に戻る、今、そんな時なのかな。

 

森の中のクリスマスレッスン

今週末の季節の花クラスのご紹介です。
テーマは「森の中のクリスマス」

 

北国育ちの私はクリスマスというと、東京郊外に住む今でも「雪が積もったホワイトクリスマス」を思い出します。

言葉からイメージするものは人それぞれ違います。昔読んだ絵本、小説に出てくる場面、旅先の景色などなど…自分のイメージするものをお花で自由に表現しましょう!というクラスです。

写真は我が家に飾っている大きなツリーのオブジェ。

「私の森の中のクリスマス」

今回は雪が積もった木々、凍りついた枯れ枝、キーンと冷たい風と、りんごや赤い実は、クリスマスを楽しむ人々、華やかにデコレーションされた温かな雰囲気の街並みの対比を表現しました。

自然のリズムを感じながら、それぞれの表現方法で自由にお花を楽しみませんか。